『四月の永い夢』
冒頭に、呆然と立つ1人の女性。喪服を着ているようだ。どうやら恋人がなくなってしまったらしい。
数年後まだその「彼」を忘れられない彼女の日常に迫る、そんなお話
目次
四月の永い夢のキャスト
初海|朝倉あき
四月の永い夢の主役。
恋人をなくし、教師を辞め(直接的な原因かどうかは分からない)、蕎麦屋さんで働く女性。
恋人がなくなってしまったことを忘れられないでいる。
志熊藤太郎|三浦貴大
初海に思いを寄せる手ぬぐいを作る職人。個展を開いたり、町内の催しに参加したりと活動的
初美の愛想笑いが似合わない顔が好き。
楓|川崎ゆり子
初海の元教え子でジャズシンガー。
彼氏のDVに苦しみ、初海の家に転がり込む
昔はおとなしい性格だったが、今は活発な感じ
忍|高橋由美子
初海が働く蕎麦屋のお母さん。
面倒見がいい感じで、気も回せる見本のような方
朋子|青柳文子
初海の同級生で教師。
産休に入ることから、初海に臨時で非常勤講師にならないかと誘う。
幸男|志賀廣太郎
初海が付き合っていたけんたろうの父親で吹奏楽をやっていた。
杏子|高橋惠子
初海が付き合っていたけんたろうの母親で吹奏楽をやっていた(レスリングはやっていない)
四月の永い夢のあらすじ
四月の永い夢のあらすじを簡潔にまとめました。
※シーンの一部を取り上げているだけなので、気になっていただけた方は実際に見てもらうことをお勧めします。
四月の永い夢のあらすじ(序盤)
世界が真っ白になる夢をみた
小学生のころ 授業を聞かずに窓の外の山々をずっと見ていた
中学生のころ 授業を聞かずに地図帳を指で辿って日本の隅々を旅していた
高校生のころ 恋愛に奥手だったわたしは
宛先のないラブレターを書いては机にしまっていた大学生になってわたしは東京に出てきた
四月の陽射しにほだされて わたしはようやく恋をえたとても不思議な人だった
決して目を合わせようとしない人だった
けれども とても優しい人だったそれからどれくらい経っただろう
いつの間にか わたしは窓の外の山々を夢見ることなく
いつの間にか わたしは遠くの知らない町を夢見ることなく
詩の書き方さえ机の中にしまってしまったふと目を覚ますとわたしの世界は真っ白なまま
覚めない夢をただようような 曖昧な春の陽射しに閉ざされて
わたしはずっと その四月の中にいたhttp://tokyonewcinema.com/news/7802/より引用
3年前、大切な人(元恋人)がなくなってしまった。
今そのことをまだ忘れられないでいる初海は教師という職業をやめ、近所の蕎麦屋さんで働く。どうやらとても居心地がいいらしい。店主や常連さんともいい雰囲気だ。初海が珍しい遅刻をしたその日あることを告げられる。店主の親父さんが年配な事もあってどうやら来月に店を閉めるらしい。
1週間新しい職探しの猶予をもらった初海だったが、気が乗らないまま日々が過ぎていった。そんな日々のある日、映画を観に行ったとき、偶然「知り合い」にあった。
「誰だ?」
と最初は誰か分からなかったが昔の教え子「楓」だった。雰囲気の変わった楓は突然「家に泊めてほしい」と頼んでくる。体中あざだらけ、DVの被害に遭っているらしい。
そして楓は初海の家の中である手紙を見つける…
四月の永い夢のあらすじ(中盤)
楓を泊めた翌日に初海は学生時代の友人で教師の朋子と喫茶店で会うことに。「話したいことがある」と電話した来た朋子の話は「私に変わって非常勤の教員やってみない」というものだった。あまり乗り気ではなかった初海はその場ではとりあえず保留とした。そして喫茶店から出た初海に楓から電話が。
「助けて。」
彼氏の家に荷物を取りに行き、用事でいないはずの彼氏が帰ってきてしまった。初海は急いでタクシーに乗り楓のもとに向かった。同じアパート住人の協力もあり、なんとか事態を乗り越えることが出来た。
そして季節は夏になり町の集まりでバーベキューに参加した初海たち。蕎麦屋で働いていた時に「個展に来てほしい」と初海のことを誘っていた藤太郎とも再会した。蕎麦屋のおかみさんである忍の計らいで2人きりで後片付けをすることに…道具を手ぬぐいを染めている工場に持って帰った。干している美しい手ぬぐいに楽しそうにしている初海を見て、藤太郎は自分が作ったという手ぬぐいを半分ちぎってあげた。
そしてその帰り、藤太郎は2年前から初海のことが気になっていて見ていたことを独特の感性で話す。藤太郎の好意に気分が高まった初海はお気に入りの音楽を聞きながら楽しげに帰っていたが、ふと我に返り寂しげな表情になってしまった。
初海は楓が出演するジャズコンサートに藤太郎と行った。その帰りに藤太郎から「また会いたい」と言われるが、その場を濁した。具体的な回答がもらえない藤太郎はなくなってしまった恋人が原因なのと初海に聞いてしまう。図星を突かれて嫌な気持ちになったのか初海は藤太郎を残し帰ってしまった。
四月の永い夢のあらすじ(終盤)
初海は彼の親御さんから気にかけてもらっていたので、亡くなった元恋人のけんたろうの実家に行くことにした。彼の家族は再会を快く望んでいて暖かいムードで話していたらあっという間に夜になった。そしてその夜、彼の母親と2人きりになった初海はあることを打ち明ける。
「実は私たち、彼がなくなる4カ月前に別れていた」と…
ずっと言えない心のもやもやをようやく誰かに話すことが出来た初海。お母さんは「あなたが気にすることじゃないよ」とあたたかい言葉を紡いでくれた。その後、初海は数多ある彼の手紙から最後の1枚を思い出していた。
『僕のことは忘れて幸せになってください』
そして次の朝、近くの森に散歩に出かけた初海。どこか吹っ切れた様子だ。そして彼の位牌の前に筆不精の初海が精いっぱいの気持ちを書いた手紙と気持ちを置いて彼の実家を出た。
帰ろうとした初海だったが、電車の運行が遅れるとのアナウンスが。時間をつぶすために近くの飲食店に入り、ラジオを聞いていた。聞いているといかにもそのままのペンネームで書いた藤太郎のハガキが読まれた。内容は告白していて振られただけならまだしも余計なことを言ってしまって彼女を傷つけてしまったというものだった。そしてリクエスト曲に藤太郎に教えた一番好きな曲が流れると、初海は何か吹っ切れたような笑顔をこぼしていた。
四月の永い夢の劇中歌・主題歌など
● 書を持ち僕は旅に出る 赤い靴
初海のお気に入りの歌。劇中の初海の楽しげに歩くシーンにこの上なくピッタリでした。
● As Time Goes By
初海と楓が見ていた映画の歌
四月の永い夢のロケ地
この映画の主なロケ地は「国立」です。國立のPR動画にも成り得るくらい魅力的な映像が多かったと感じます。
今回は実際にシーンに使われたいくつかを紹介したいと思います。
● 大作そば店(https://r.gnavi.co.jp/kmaz57rh0000/)
初海が働いていた蕎麦屋さんのロケ地
さまざまなきっかけがあった場所です。お店が閉店にならなかったら日常が変わることもなかっただろうし、お店が無かったら藤太郎と出会わなかった。
初海でなくとも居心地がよさそうだなと思う場所です。
● 鳩乃湯(https://www.its-mo.com/detail/DIDX_DKE-2097094/)
初海と楓が浸かっていた銭湯のロケ地です。
昔ながらの銭湯って感じでとても映画の雰囲気に合ってました。初海は「気分を入れ替える」のに使っていたのかな…
● 白十字(kunitachihakujuji.g3.xrea.com/)
初海と同級生の朋子が会っていたいた喫茶店のロケ地です。おいしそうなにおいがプンプンします。
他にも意識的に国立の雰囲気のある魅力的な場所をロケ地として使っていたので、是非足を運んでみてはいかがでしょうか。
四月の永い夢の感想・レビュー
● 主役の好演
まず魅力的なのは主役の朝倉あきさん。語尾が上がる話し方が個人的にとても印象的で冷静な表情な裏でも感情の変化が容易に掴めました(掴めさせられました)。言葉が少ない・ないシーンがここまでっていうくらいあるのに何か説得力のあるシーンが多く感じました。とても上手く初海の心のもやもやが描けていたと思います!あと着物とか和な美人て感じでたまらなかったです。
● ストーリーの難しさ
ストーリーはというと、「何が言いたのかな」って感じる場面も少なくありませんでした。「なぜ主役は元彼のことを引きずってしまっているのか」「なぜ教師を辞めるに至ったのか・なぜ教師になったのか」「同級生の朋子とは本当に仲がいいのか」「けんたろうって誰なのか」など疑問が次々と湧いてきて「結局何が言いたかったの」と思ってしまいました。映画を見ている最中はこんな感じのこと思っていたのですが、観終わった後こうしていろいろ思い出してみると「行間を読め」ってことなのかなと思いました。
例えば「けんたろうって誰なのか」っていう問いについて考えてみましょう。
この映画中、回想シーンとて「けんたろう」は出てきません。ほとんど初海の言葉・思いや家族などの周りの人物で表現されています。一見、物語の準主人公が出てないと聞くと「なんで?」「わかんないじゃん」ってなってしまうかもしれません。しかし初海を見てると「けんたろうは絶対いい奴」ってことが分かると思います。初めて付き合った相手に亡くなってもなおここまで思わせる人間なんてそうそういません。絶対いいやつです!
次に彼の家族とのつながりを見てみましょう。いい関係を築けていたように思います。あの仲睦まじい夫婦から悪ガキなんてできやしません。小学校?のころ先生のスカートの中に顔を入れてみたいですが… また、お母さんのことをレスリング選手って嘘つくくらいには悪ガキだったのでしょう。えっ悪ガキ!? そうです。すいません。この子悪ガキでした。(しかし、初海のことはとても大事にしていたのではないでしょうか。)
こんな感じで語られた部分は少ないかも知れませんが「行間を読む」(すいません。この言葉あっていますか笑)ことでいろいろな事が見える作品なのかと思います。
感じ方にはいろいろあると思いますが、素直に語られる感じではないので、ストーリーは難しいなと思いました。
この映画は「悩んでいることは時間と少しのきっかけで変わるんじゃないかな」っていうことを伝えたいのかなと、僕は感じました。
四月の永い夢の評価
2017年6月、モスクワ国際映画祭。『四月の永い夢』は、国際映画批評家連盟賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞
● 映画.com 3.2/5 ★★★☆☆ (38件 2020/5/30付)
● Filmarks 3.7/5 ★★★★☆ (1.2K件 2020/5/30付)
みるそんの評価
個人的に映画を見るときによく見る部分を数値にしてみました。
● キャストたちの演技 18/20
総じて良かったです。特に主演の朝倉あきさんと楓役の川崎ゆり子さんは波長が合っている感じで見ていていいなと思いました。
● ストーリーの面白さ 15/20
見る人によっては化けるストーリーだと思います。2回見ても新しい発見がありそう。口に出さない言葉での伝え方が秀逸でした。
● 起承転結度 7/20
強弱の付け方は弱く感じました。テンションの波が緩やかでした。でもあのラストは個人的に好きです。
● 映画に合った音楽 17/20
雰囲気にピッタリな感じでした。楽しげな表情の初海が急に我に返ったところの音楽の使い方は個人的に好きでした。
● 喜怒哀楽度 10/20
退屈せずには見れましたが、どのシーンも押しがちょっと弱い印象。初海とけんたろうの母のシーンはお互いの思いがこもってて良かったです。
〇 総合評価 ★★★★★★★☆☆☆(67/100)
最後までお読みいただきありがとうございました!
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